組織設計の論点

執行役員レイヤーの
設定にあたって

執行役員を置くだけでは、意思決定の形は変わらない。
レイヤーが機能するための条件を確かめ、決めること・つくること・守ることを一通り整理した。
経営管理の再現性を高めながら、創造の百点を生む個人の感性は守る。

2026年11月 / 各部署責任者からの聴取に基づく / 部署別の詳細は別紙 に収めている
サマリー① / 執行役員レイヤーとは何か

オーナーの確認を待たずに現場が動く。
そこまでやって、執行役員を置いたことになる

執行役員の設定は、肩書きを増やすことではない。どの判断を、どこまで渡すかを決めること。権限委譲と、同じ一つのことである。

オーナー対外・投資・意匠・重い決裁執行役員二つの組に入る各部マネージャー自部署の日常業務方針を決める原案と報告(◎)計画に落とす進捗を報告方針の提案と合意実行と進捗の確認

どちらの組にも執行役員がいる。だから、方針と実行がつながる。渡した範囲は報告(◎)で把握する。減らすのは確認の待ち時間だけで、見える範囲はそのままである。※どの判断をどこまで渡すかの具体は、後段の権限の線引きで示す

サマリー② / 経営のスタイルを変える

「良さそうなことを、なんでも」から、
「絞って、精度を高めて、型にする」へ

良い案が多いことは、強みである。ただし全部に手をつけると、どれも十分に進まない。いま会社に足りていないのは、絞って・高めて・残す型である。

良さそうなこと思いついた施策が次々に仕分けと優先順位づけ執行役員 × マネージャー実行か、見送りか重点テーマは1〜2個型として残す人が替わっても回る案として上がる数字と現場の実感から決め方と手順を記録する見送り今期はやらない絞る → 精度を高める → 型にする。この一本を通すことが、経営のスタイルを変えるということである

この型をつくるために、執行役員に二つの権限を渡す。良さそうなことをやるかやらないか選り分ける権限と、取り組みの優先順位を決める権限である。※重点テーマの決め方は、後段「方向性は、執行役員が提案する」で示す

サマリー③ / 想定されるリスクとデメリット

確実に失うのは速さ。起こりうるのは、精度の低下である

二つは、扱いを分けたい。確実に起きることは、仕様として受け入れる。起こりうることには、先に手を打つ。

確実に起きる | 仕様として受け入れる個別の判断に、合意形成の時間が挟まる方針を変えるには、決めた場に戻す手続きが要る現場の話は、執行役員を経由して上がる起こりうる | 先に手を打つ備え執行役員の判断が、当初は同じ精度にならない渡す範囲を限って始め、30日ごとに点検して広げる急ぎの判断が、会議を待って機会を逃す臨時の招集と持ち回り決裁を、先に決めておく手順だけ増えて、運用が形だけになる新しい管理資料は作らず、週報と決定ログに乗せる

成立の前提は一つ。合意した決め方を、オーナーを含む全員が守り続けることである。ここが崩れれば、委譲は成立しない。この場での即断は求めない。※日程も区分も、すべてたたき台。この場で調整できる

現状把握 / いま確認されていること

いま確認されているのは、人材流出の入口にあたる事象である。
放置すれば、組織運営と業績に深刻な影響が及ぶ

組織機能が低下するまでの連鎖

01

方針が頻繁に変わる

今日の一番と来週の一番が違う。頑張ったことが無駄になる経験が積み重なる。

02

現場が自主的に動かなくなる

「どうせまた変わる」を前提に、現場は確認してから動くようになる。

03

施策が継続せず、業績に影響する

固定費型の構造では、売上の減少が利益を直撃する。

04

退職が続く

一人が抜けると負荷が周囲に寄り、二人目・三人目が続く。短期間で組織の中核人材を失うおそれがある。

なぜ連鎖が止まらないか

  • 従来の経営手法が、現在の組織規模に合わなくなっている。オーナーの即断は、全部署を一人で見られる規模までは最速の経営だった。いまは七部署の判断が一点に集まり、どの領域にも十分な時間が取れない状態が聴取で確認されている
  • 聴取では、この連鎖の入口にあたる事象が複数の部署で確認されている(詳細は別紙)
  • 特定の人への依存が強く、抜けたときに代われる人がいない。任せる経験を積む機会が、これまでなかったということ
  • 人が抜けることは、業績に大きく影響する。補充の採用費・立ち上げ期間の生産性・引き継ぎの負荷が、売上への影響とは別に重なる

これは誰かを責める話ではない。特定の人が抜けても業務を継続できる体制を、あらかじめ整える必要がある。※聴取は部署単位で整理しており、個人は特定しない
以降の手段は、すべてこの連鎖を断つことに向かっている。

課題の深掘り / なぜ、繰り返されるのか

背景には、十分な検討を経ない意思決定と、互いに責任を求め合う悪循環がある

意思決定が覆ることで自走が失われ、さらに判断が集まる悪循環 01 十分な検討を経ずに 決まり、後から覆る 02 現場は「また変わる」 と考え、確認しに来る 03 決めた経緯が残らず 合意が共有されない 04 結果の責任が現場に偏り 決める意欲が下がる 繰り返すたびに強まる 起点は①にある。ここが変わらない限り、下流をいくら直しても循環は続く
オーナーから見ると「現場が考えてくれない」
双方の見え方は、同じ構造から生まれている
現場から見ると「考えるだけ無駄」

この循環の読み方

  • どちらも本人にとっては正しく、相手の側からは見えない。片方だけを責めても動かない
  • 戦略判断と日常の執行判断では、必要な情報が異なる。日常の執行に要る材料は現場に集まるため、そこへの介入は外れやすい。手戻りと「考えるだけ無駄」が積み上がる
  • 判断がオーナーに集まるのは、現場が決めても意味がない構造のためである。
  • 「自分で決めてよい」という言葉だけでは、意欲は戻らない。決めても覆らない経験が積み上がって初めて、現場は決め始める

悪循環を断つ五つの状態

  • ① 方向性の共有 達成の定義を、本人の言葉で言える
  • ② 手順と決定の記録 記録に残り、理由なく覆らない
  • ③ 判断材料が届く 決定・数字・経緯が、必要な人に流れている
  • ④ 対応範囲 どこまで自分で判断してよいかが分かる
  • ⑤ 相談相手 誰に聞けば動き出せるかが、先に決まっている

最も深刻なのは、この五つを支える仕組みがないことである。次ページで、五つの現在地を診断する。以降の手段は、この条件に対応している。

だからこそ、目指す組織の像
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

この五つが揃って初めて、人に託せる

「託す」とは、放任でも丸投げでもない。相手が自分で判断して進められる状態を、先に用意することである。揃っていないまま託せば、それは丸投げになる。

目指す状態いまの状態現れ方
① 方向性が明確であること
何をもって達成とするかを、本人の言葉で言える
部分的 定義はされている。ただし中長期のロードマップを踏まえた目標になり切っていない部署がある。ロードマップを方向性に翻訳する場とプロセスが、まだ存在しない
② 手順が決まっていること
後から辿れる形で残っている
部分的 定義はされている。ただし守られていない。管理職層からの督促も行われていない
③ 判断材料にアクセスできること
決定・数字・過去の経緯が、必要な人に流れている
未整備 届いていない。会議が「決める場」として設計されておらず、決定と経緯が記録に残らない。必要な情報が共有されない
④ 対応範囲が決まっていること
どこまで自分で判断してよいかが分かる
未定義 決裁権限が階層別に定められていない。やり取りが個人の裁量に委ねられている。まず、権限の範囲を明確にする必要がある
⑤ 相談相手がいること
誰に聞けば動き出せるかが、先に決まっている
部分的 相談は上がる。ただし受けた側が解き方を持ち合わせていない部署がある

最も上流にあるのは、①方向性と④対応範囲である。手順・材料・相談相手だけを直しても、この二つが変わらない限り元に戻る。
この五つを、仕組みとして揃える。そのために、執行役員レイヤーを設定する。※部署ごとの評価は別紙

組織体制 / 経営レイヤー|オーナーと執行役員
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

経営レイヤー=オーナーと執行役員。経営方針と権限を定める

経営レイヤー(オーナーと執行役員)の定義。オーナーに残す二領域と、それ以外の委譲 執行レイヤー 企画 店舗 PR バックオフィス EC 生産管理 営業 各部署の日常業務は、マネージャー(部署長)が判断する 経営レイヤー オーナー固有の二領域 ・対外的な顔と、業界人脈 ・投資の意思決定 オーナー 日常の執行判断を委譲 執行役員 経営方針を提案し、 オーナーと議論して決める

経営レイヤーが持つのは、三つ。経営方針(重点テーマ)の策定、決裁権限の設定、★事項の決裁。オーナーには、役割としての固有二領域と、権限としての留保決裁(経営計画の承認、管理職の人事、重い懲戒、1,000万円超・予算外の支出など)が残る。委譲するのは、それ以外の日常の執行判断である。
意匠・クリエイティブは、仕組みの外に置く。線引きもオーナーの領域で、執行役員が担うのはその判断を計画に反映することだけである(急な変更は「何を優先順位から外すか」とセットで)。※固有領域と留保決裁の線引きは、この場で調整できる

組織体制 / 執行レイヤー|執行役員と各部マネージャー
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

執行レイヤー=執行役員と各部マネージャー。経営方針を具体的な施策に移す

執行レイヤー(執行役員と各部マネージャー)の定義。執行役員が二層をつなぐ構造 経営レイヤー オーナー固有の二領域 ・対外的な顔と、業界人脈 ・投資の意思決定 オーナー 日常の執行判断を委譲 執行レイヤー 執行役員 二つの層に属し、 経営方針を実行計画につなげる 企画 店舗 PR バックオフィス EC 生産管理 営業 各部署の日常業務は、マネージャー(部署長)が判断する

執行レイヤーの仕事は、実行すること。合意したテーマを行動計画に落とし、個人まで下ろす。各部署の運営は、マネージャーが決定する。
執行役員は両方の層に属する。経営レイヤーでは経営方針を提案し、執行レイヤーでは計画に落とす。二層をつなぐのが、この役割である。
※三つの階層それぞれの役割と決裁は、後段「役割と権限の線引き」で一覧する

運用 / 方向性は、執行役員が提案する
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

方向性は、執行役員が提案する。合意した方針は、決めた場に戻してから変える

経営方針の決定手順

01

執行役員が、年間の方向性を提案する

数字と現場の実感から、執行役員が原案をつくる。

02

オーナーと議論し、経営レイヤーで合意する

十分に検討してから決める。検討が不十分な決定は、記録しても後から覆りやすい。

03

各部署に、取り組みテーマとして下ろす

テーマ=年間1〜2個の重要改善指標に絞る。これが執行レイヤーの出発点になる。

04

変更は、決めた場に戻して理由とともに

変更の経路を一本にする。必要な方針変更は認めつつ、変更手続きを明確にする。

なぜ「1〜2個」に絞るか

  • 重点を絞らなければ、どの施策も十分に進まない。現場の可処分時間は有限である
  • 絞れば、方針変更による手戻りを減らせる。徒労感の発生源を断つ
  • 指標が絞られて初めて、達成度を評価と紐づけられる
  • 方向性が揺れないことが、悪循環を断つ最初の条件である

経営方針の決定は、経営レイヤーの責任である。方針が定まらなければ、各部署の計画も定まらない。

運用 / 合意した方針を、個人レベルまで落とす
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

合意した方針を、個人レベルまで落とす

実行計画の運用

01

取り組みテーマをもとに、行動計画を策定する

経営レイヤーで合意したテーマを、執行レイヤーが実行可能な計画に具体化する。

02

行動計画は、執行レイヤーで確定する

計画の決定権は執行レイヤーにある。経営会議へは共有のみ。ただし予算超過・テーマの変更・重要な経営リスクを伴う場合のみ、経営会議で再審議する。

03

行動目標を、個人目標まで具体化する

テーマに基づく目標を各担当者の目標に具体化し、本人と合意する。

04

評価に反映する

達成度と、どう達成したかを見る。テーマ偏重を避け、部署の基盤業務と併せて評価する。※評価への正式接続は制度設計後(人事コンサルと協業)。立ち上げ期間中は評価に直結させない

これで何が変わるか

  • 方針が示されれば、各部署が自ら計画し、実行できる。確認してから動く組織から、計画に沿って動く組織へ
  • 担当者未定の案件が残らない。計画策定時に、担当者を決める
  • 評価がテーマへの貢献と結びつき、納得感が上がる
  • 詰まりは執行会議で解消する。計画が止まったまま放置されない
  • オーナーへの説明責任は執行役員が持つ。現場との対話はこれまで通りでよい。会議体に乗せるのは指示と決定だけ

決定の階層。経営レイヤー=年間テーマ・予算・重要改善指標/執行レイヤー=行動計画と部署横断の優先順位/マネージャー=自部署の日常業務。経営レイヤーは権限内の個別施策を都度承認しない。共有(報告)と、例外時の再審議だけを持つ。ただし計画内の個別の支出・契約の決裁は、権限表の区分に従う。

計画は、隣り合う二つの階層が組んで作る。執行役員とマネージャーが連結点になり、方針が個人の行動まで途切れずつながる

オーナー × 執行役員 経営方針の策定 会社が進む方向と、判断の基準を定める
執行役員 × マネージャー 部署単位の実行計画の策定と進捗の確認 方針を部署の計画に落とす
マネージャー × メンバー 個人の行動計画の策定と進捗の確認 計画を個人の行動に落とす
理解しておいてほしいこと / 速さの交換

手放すのは瞬間の速さ。得るのは、方針が続く組織である

オーナー個人の判断速度・精度に、組織が追いつくには時間がかかる。瞬間的な速さの一部を手放して、継続的に前進できる組織をつくる。このトレードオフを先に共有したい。

スピードの観点この設定によって起きること
個別判断のスピード 合意形成や検討を挟むため、従来より遅くなる場面がある
方針変更の自由度 オーナーの意向だけでは即座に変更できず、手続きや調整が必要になる
組織全体の実行速度 手戻り・確認待ち・優先順位の変更が減ることで、中長期的には改善を目指せる

目指すのは、オーナー個人の能力に依存した経営から、組織として継続的に成果を出せる経営への転換である。移行期のコストを認識したうえで、中長期の組織能力を取りにいく。
ただし遅さを放置もしない。指示が実行に乗るまでの所要時間は開始30日を起点に測り、改善が見られなければ運用を見直す。移行コストにも、期限と測り方を置く

決めること / 役割と権限の線引き
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

役割と決裁を三階層で引く。「報告だけで進む」領域を広げることが、委譲の実体である

事項ごとに、関与の深さ(報告を受ける◎・承認◯・協議△・★経営会議の事前審議)を定める。日常の判断は各階層に委ね、オーナーは重要な経営判断に専念する。

階層担う役割決めてよい範囲と、オーナーの関与
オーナー
経営レイヤー
対外的な関係構築と投資判断。中長期的には、ブランド哲学の言語化を主導し、重要な取引関係を会社の関係として育てる 協議(△)・★事項を決める 経営計画、部門・役員・規程、懲戒、1,000万円超・予算外の支出。承認(◯)で関与するのは50万円超の商品発注・年間240万円超の契約・M2以上の人事など。それ以外は、報告(◎)で把握する
執行役員
二つの層に属す
経営方針の提案、実行計画の策定、部署間の調整、人材の配置・育成、進捗管理と課題解決 決めて、報告(◎)すれば進む 1件50万円以下の商品発注、予算内の備品・経費、M1以下の採用・考課・退職、チーム編成・部門内の配置
マネージャー
執行レイヤー
担当部署の運営と日常的な意思決定、個人目標の設定、メンバーの育成、現場課題の把握と対応 自部署の日常業務の運営。個別の線は権限表のマネージャー等級(M2/M1)の区分に従う。自分の線を越えるものは、執行役員へ上げる

「役割」は各階層が責任を持って担う仕事、「決裁」は最終的に決定できる範囲を示す。全文は別表「職務権限一覧表(PASAND版)」。代表・取締役・執行役員・マネージャー(M2/M1)・メンバー、企画はMD・ディレクター・デザイナーの系列まで、事項×職位で線を引いている。
※金額の線(商品発注50万円・契約240万円など)と区分はたたき台。この場で調整できる

決めること / コミュニケーションの再設計
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

仕組みを活かすのは、日々のコミュニケーション。MVVを起点に再設計する

権限・会議体・計画は、構造である。構造の中を流れる日々の対話の質が変わらなければ、委譲は動かない。判断と対話の共通基準を MVV・Pasand Promise に置き、三つの場を設計し直す。

場何を変えるか具体的なアプローチの例
ミーティング
質の向上
報告の場から、決める場へ。結論だけでなく、MVV・方針にどうつながるかを添えて議論する 材料は前日までに共有し、会議の時間は議論と決定に使う。決定は理由とともに記録する。会議体の設計は後段・運用規格は別表で定める
1on1
質の向上
詰まりの解消と、成長支援の場。行動指針に基づいて「どう達成したか」を語り合う 執行役員×マネージャー、マネージャー×メンバーの計画を組むペアごとに定例化し、週報に乗らない詰まりと意欲を拾う
テキスト
指示・FBの書き方
指示・依頼・フィードバックに、背景と目的を足す。受け手がその一通で判断し、動ける情報量を基準にする 事実と期待を分けて書く。受け手の意欲を上げているか・情報を足せばもっとスムーズに進まないか。送る前にこの二つを問う

三つの場は、五つの状態を日々の運用に落とす手段である。判断材料が届き、詰まりに経路があり、目指す先が共有される。三つの場は、その実体である。

決めること / 委譲の守り方
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

任せるとは、判断する権限と、結果への責任を渡すことである

委譲を守る五つの運用

01

懸念があれば、責任者に確認する

指示ではなく質問の形で 質問であれば、判断は責任者に残る。

02

追加案件は、既存業務の優先順位と合わせて判断する

急な依頼があってよい。新しい業務を加える際は、既存業務の見直しも行う。

03

責任者を置けない企画は「今期はやらない」

無理に責任者を立てない。名目上の責任者を置いても、実行責任は明確にならない。

04

部門横断の取り組みは、経営方針として共有する

方針がないままだと、部門をまたぐ取り組みは負担の押し付けと受け取られる。

05

責任者が機能しない場合は、支援または交代を判断する

必要な支援を行い、改善が難しければ交代を検討する。対応を先送りしない。

委譲に不安はつきものだ。しかし、不安を理由に直接指示へ戻れば、委譲は成立しない。責任者を介さずに現場へ指示すれば、委譲した権限が形骸化し、現場は「結局は上が決める」と学習する。

残した領域では(三つ)

01

議論に加わる

相談が上がったテーマには、結論が出るまで関わる。途中で離れると、決まらないまま止まる。

02

経緯と結論を残す

記憶ではなく記録に。残っていれば、次に同じ議論をせずに済む。※責任追及のための記録ではない

03

決めた進め方を尊重する

工程や期限を動かす場合は、決めた場に戻して、理由とともに変える。

問題は、相談が来ることではない。来た後の扱われ方である。議論に加わりきらないまま進み、経緯が残らず、進め方が途中で変わる。結果、原因の所在が部署の側に見えてしまう。

オーナーは「任せる責任」を、執行側は「引き受ける責任」を持つ。どちらも「合意した意思決定の手順を守る」という一つのことである。現場との対話はこれまで通りでよい。会議体に乗せるのは指示と決定だけである。※「残した領域」は、固有の二領域と、★・△として経営会議に上がったテーマを指す。緊急時の例外は後述

決めること / 会議体とオペレーション
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

意思決定の場と頻度を定め、確認や手戻りを減らす

会議体頻度決めること出席受けるもの → 出すもの
経営会議 月次
重い審議
方向性(年間テーマ・予算・重要改善指標)と権限の線、★事項の事前審議、30日ごとの運用レビュー(権限の線・会議の規格・手順の遵守)。行動計画は共有を受けるのみ(例外時は再審議) オーナー・執行役員
議長=執行役員/最終判断=代表
In: 全社3点セット・決裁一覧・★起案
Out: 経営判断・確定テーマ・決定ログ
ヒアリング会 週次
立ち上げ期。以後も継続
決める場ではなく、聞く場。現場の状況・詰まり・気づきを、オーナーが直接聞く。決定が要る論点は、執行会議・経営会議へ回す オーナー・執行役員
進行=管掌執行役員/テーマにより担当者が同席
In: 現場の状況・気づき
Out: 論点の整理(決定は会議体へ)
執行会議 週次 行動計画の確定と進捗、詰まりの解消、部署横断の優先順位 執行役員・マネージャー
議長=執行役員/最終判断=管掌執行役員
In: 各部の週報・上位会議の決定
Out: 調整結果・更新した行動計画・上申(★起案)
部署会議 週次 自部署の取り組みテーマと行動目標の進捗 マネージャー・メンバー
議長・最終判断=マネージャー
In: 個人の進捗・現場の詰まり・決定共有
Out: 個人のアクション・週報(執行会議へ)

決める場所を固定して、場外の確認・差し戻し・「言った言わない」を減らす。階層を跨ぐ相談は会議体に乗せ、すべての会議に議長と最終判断者を置く。提案は結論から述べ、判断材料と理由をセットで出す。
下の会議が出したものが上の会議の材料になり、上の決定が翌週の伝達で下へ戻る。様式は「3点セット(週報)」と「決定ログ」の二つだけで、新しい管理資料は作らない。※記録・固定アジェンダ・欠席時の扱い・起案様式・決定ログの項目は、運用規格として別表で定める。構成・頻度はたたき台。この場で増減を調整できる

決めること / 導入の三段階
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

導入は三段階。年内に設計し、年始から立ち上げ、まずは1シーズンやり切る

段階期間の目安主にやること完了条件(成果物)
1 設計・合意 年内
着手決定〜12月
固有領域と留保決裁の確定/執行役員の分担と、不在時の代行の文書化/権限表(現時点版)・会議体の確定/各部のテーマと日常判断の仮置き/AI・データ基盤の適用範囲の確定/五つの状態のアンケート設計/開始時点の測定(設計用の臨時経営会議を2回置く) 役割分担書・権限表(現時点版)・会議体規格・テーマ一覧・開始時点の記録1枚
2 立ち上げ 年始から90日
1月〜3月
マネージャー説明会/会議体と決定ログの運用開始/権限委譲と行動計画の運用/現場ヒアリング会議(週次)/30日ごとのレビュー(テーマは初回仮置き・30日で確定) 決定ログの稼働と手順の遵守状況・アンケート結果(開始時点比)・運用課題リスト
3 定着・改善 4月〜 ルールの修正/評価制度との接続/管理職の育成/四半期の定期診断 改訂権限表・評価への接続・診断レポート

立ち上げ期の点検は、件数ではなく評価で行う。五つの状態をそのまま評価項目にしたアンケート(+自由記述)と、週次のヒアリング、30日ごとの運用レビューで測る。何をもって成功とするかは、着手前に合意しておく。12ヶ月の結果指標(離職率など)は中長期で検証する。
90日レビューは続け方を直す点検で、やめるかどうかを決める場ではない。再判断は1シーズンを終えた時点で行う。中核人材の離職や業績の大幅な悪化が起きた場合は、90日を待たず臨時レビューで切り分ける。※実行責任は第1段階が執行役員の起案とオーナーの決裁、第2段階以降は執行役員。各段階の完了判定は経営会議が行う。日程はたたき台で、この場で調整できる

ディスカッション / この場で決めたいこと

本日ご相談したいのは、四つ

どれもたたき台である。実態に合わないところは、この場で動かしたい。

論点いまの案と、確かめたいこと
01 オーナーに残す線 対外の関係づくりと投資判断、意匠・クリエイティブの判断(線引きごと)、重い決裁。足すもの・減らすものはあるか。
02 金額と区分の線 商品発注は1件50万円、取引契約は年間240万円、協議は1件1,000万円超。いまの実態に合う水準か。
03 担当と最終責任 課題のあるテーマに限って主担当を置き、実行まで含めた最終責任者を一人決める。どのテーマから着手するか。
04 年内の設計への着手 着手するなら12月までに、役割分担書・権限表(現時点版)・会議体規格・開始時点の記録を揃える。この進め方でよいか。

この場での結論は求めない。論点を確認いただいたうえで、持ち帰って期日を置いてご判断いただきたい。
※設計を進める範囲と体制、費用は別途ご提示する