組織設計の論点

執行役員レイヤーの
設定にあたって

執行役員を置くだけでは、意思決定の形は変わらない。
レイヤーが機能するための条件を確かめ、決めること・つくること・守ることを一通り整理した。
経営管理の再現性を高めながら、創造の百点を生む個人の感性は守る。

2026年11月 / 各部署責任者からの聴取に基づく / 部署別の詳細は別紙 に収めている
サマリー① / 執行役員レイヤーとは何か

執行役員層を新設し、経営方針と実務をつなぐ。
個々のメンバーが、一定の成果を出せる組織にする

つなぐ手段が、権限委譲である。どの判断を、どこまで渡すかを決めること。執行役員を置くことと、権限を渡すことは、同じ一つのことである。
特定の個人の力量に頼る状態から、誰が担っても一定の成果が出る状態へ移すことが狙いである。本資料が扱うのは、この経営基盤の話である。商品企画の立て直しは、事業の競争力を高める別の経営課題として、最後に議論したい。

オーナー対外・投資・意匠・重い決裁執行役員二つの組に入る各部マネージャー自部署の日常業務方針を決める原案と報告(◎)計画に落とす進捗を報告方針の提案と合意実行と進捗の確認

どちらの組にも執行役員がいる。だから、方針と実行がつながる。渡した範囲は報告(◎)で把握する。減らすのは確認の待ち時間だけで、見える範囲はそのままである。※どの判断をどこまで渡すかの具体は、後段の権限の線引きで示す

サマリー② / 経営のスタイルを変える

「良さそうなことを、なんでもトライ」から、
「方針を踏まえて絞り、精度を高めて、型にする」へ

良い案が多いことは、強みである。ただし全部に手をつけると、どれも十分に進まない。いま会社に足りていないのは、方針を踏まえて絞り、高めて、残す型である。

良さそうなこと思いついた施策が次々に仕分けと優先順位づけ執行役員 × マネージャー実行か、見送りか重点テーマは1〜2個型として残す人が替わっても回る案として上がる経営方針と数字に照らして決め方と手順を記録する見送り今期はやらない方針を踏まえて絞る → 精度を高める → 型にする。この一本を通すことが、経営のスタイルを変えるということである

この型をつくるために、執行役員に二つの権限を渡す。良さそうなことをやるかやらないか選り分ける権限と、取り組みの優先順位を決める権限である。※重点テーマの決め方は、後段「方向性は、執行役員が提案する」で示す

第1章
01

なぜ、いま変えるのか

いま確認されている事象と、その根にある悪循環。そして、人に託せる五つの状態の現在地を見る。
現状把握 / いま確認されていること

いま確認されているのは、人材流出の入口にあたる事象である。
放置すれば、組織運営と業績に深刻な影響が及ぶ

聴取で確認されている事実

01

方針が頻繁に変わる

今日の一番と来週の一番が違う。頑張ったことが無駄になる経験が積み重なる。

02

現場が自主的に動かなくなる

「どうせまた変わる」を前提に、現場は確認してから動くようになる。

03

人材流出の入口にあたる事象が出ている

複数の部署で確認されている。個人は特定せず、部署単位で整理している。

このまま続いた場合に想定されること

04

退職が連鎖する

一人が抜けると負荷が周囲に寄り、二人目・三人目が続きうる。短期間で中核人材を失うおそれがある。

05

施策が継続せず、業績に響く

固定費型の構造では、売上の減少が利益を直撃する。補充の採用費・立ち上げ期間の生産性・引き継ぎの負荷も重なる。

なぜ、この連鎖が止まらないか

  • 従来の経営手法が、現在の組織規模に合わなくなっている。オーナーの即断は、全部署を一人で見られる規模までは最速の経営だった。いまは七部署の判断が一点に集まり、どの領域にも十分な時間が取れないと聴取で確認している
  • 特定の人への依存が強く、抜けたときに代われる人がいない。能力の問題ではなく、任せる経験を積む機会が、これまでなかったということ
  • 止めるには、起点に手を入れるしかない。受け手を増やすだけでは、同じ循環が戻る

これは誰かを責める話ではない。特定の人が抜けても業務を継続できる体制を、あらかじめ整える必要がある。※聴取は部署単位で整理しており、個人は特定しない。詳細は別紙
以降の手段は、すべてこの連鎖を断つことに向かっている。

課題の深掘り / なぜ、繰り返されるのか

背景には、十分な検討を経ない意思決定と、互いに責任を求め合う悪循環がある

意思決定が覆ることで自走が失われ、さらに判断が集まる悪循環 01 十分な検討を経ずに 決まり、後から覆る 02 現場は「また変わる」 と考え、確認しに来る 03 決めた経緯が残らず 合意が共有されない 04 結果の責任が現場に偏り 決める意欲が下がる 繰り返すたびに強まる 起点は①にある。ここが変わらない限り、下流をいくら直しても循環は続く
オーナーから見ると「現場が考えてくれない」
双方の見え方は、同じ構造から生まれている
現場から見ると「考えるだけ無駄」

この循環の読み方

  • どちらも本人にとっては正しく、相手の側からは見えない。片方だけを責めても動かない
  • 戦略判断と日常の執行判断では、必要な情報が異なる。日常の執行に要る材料は現場に集まるため、そこへの介入は外れやすい。手戻りと「考えるだけ無駄」が積み上がる
  • 判断がオーナーに集まるのは、現場が決めても意味がない構造のためである。
  • 「自分で決めてよい」という言葉だけでは、意欲は戻らない。決めても覆らない経験が積み上がって初めて、現場は決め始める
  • 執行役員レイヤーを置いても、意思決定の仕方が変わらなければ、同じ循環が戻る。起点が①である以上、受け手を増やすだけでは断てない。ここが、この設定の成立条件である
だからこそ、目指す組織の像
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

この五つが揃って初めて、人に託せる

「託す」とは、放任でも丸投げでもない。相手が自分で判断して進められる状態を、先に用意することである。揃っていないまま託せば、それは丸投げになる。

目指す状態いまの状態現れ方
① 方向性が明確であること
何をもって達成とするかを、本人の言葉で言える
部分的 定義はされている。ただし中長期のロードマップを踏まえた目標になり切っていない部署がある。ロードマップを方向性に翻訳する場とプロセスが、まだ存在しない
② 手順が決まっていること
後から辿れる形で残っている
部分的 定義はされている。ただし守られていない。管理職層からの督促も行われていない
③ 判断材料にアクセスできること
決定・数字・過去の経緯が、必要な人に流れている
未整備 届いていない。会議が「決める場」として設計されておらず、決定と経緯が記録に残らない。必要な情報が共有されない
④ 対応範囲が決まっていること
どこまで自分で判断してよいかが分かる
未定義 決裁権限が階層別に定められていない。やり取りが個人の裁量に委ねられている。まず、権限の範囲を明確にする必要がある
⑤ 相談相手がいること
誰に聞けば動き出せるかが、先に決まっている
部分的 相談は上がる。ただし受けた側が解き方を持ち合わせていない部署がある

最も上流にあるのは、①方向性と④対応範囲である。手順・材料・相談相手だけを直しても、この二つが変わらない限り元に戻る。
この五つを、仕組みとして揃える。そのために、執行役員レイヤーを設定する。※部署ごとの評価は別紙

第2章
02

組織は、どう変わるか

経営レイヤーと執行レイヤー。方針の決め方と、個人の行動までの落とし込みを示す。
組織体制 / 経営レイヤー|オーナーと執行役員
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

経営レイヤー=オーナーと執行役員。経営方針と権限を定める

経営レイヤー(オーナーと執行役員)の定義。オーナーに残す二領域と、それ以外の委譲 執行レイヤー 企画 店舗 PR バックオフィス EC 生産管理 営業 各部署の日常業務は、マネージャー(部署長)が判断する 経営レイヤー オーナー固有の二領域 ・対外的な顔と、業界人脈 ・投資の意思決定 オーナー 日常の執行判断を委譲 執行役員 経営方針を提案し、 オーナーと議論して決める

経営レイヤーが持つのは、三つ。経営方針(重点テーマ)の策定、決裁権限の設定、★事項の決裁。オーナーには、役割としての固有二領域と、権限としての留保決裁(経営計画の承認、管理職の人事、重い懲戒、1,000万円超・予算外の支出など)が残る。委譲するのは、それ以外の日常の執行判断である。
意匠・クリエイティブは、仕組みの外に置く。線引きもオーナーの領域で、執行役員が担うのはその判断を計画に反映することだけである(急な変更は「何を優先順位から外すか」とセットで)。
委譲で空くのは、オーナーの時間である。何に充てるかは決めつけず、最後に一緒に確かめたい。候補として挙がるのは、ブランドの方向性、商品企画とクリエイティブ、重要な対外関係、投資と中長期の経営判断など。※固有領域と留保決裁の線引きも、この場で調整できる

組織体制 / 執行レイヤー|執行役員と各部マネージャー
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

執行レイヤー=執行役員と各部マネージャー。経営方針を具体的な施策に移す

執行レイヤー(執行役員と各部マネージャー)の定義。執行役員が二層をつなぐ構造 経営レイヤー オーナー固有の二領域 ・対外的な顔と、業界人脈 ・投資の意思決定 オーナー 日常の執行判断を委譲 執行レイヤー 執行役員 二つの層に属し、 経営方針を実行計画につなげる 企画 店舗 PR バックオフィス EC 生産管理 営業 各部署の日常業務は、マネージャー(部署長)が判断する

執行レイヤーの仕事は、実行すること。合意したテーマを行動計画に落とし、個人まで下ろす。各部署の運営は、マネージャーが決定する。
執行役員は両方の層に属する。経営レイヤーでは経営方針を提案し、執行レイヤーでは計画に落とす。二層をつなぐのが、この役割である。
マネージャーへの委譲だけでは足りないのは、ここに理由がある。マネージャーは自部署の最適化に責任を持てるが、部署間で利害が衝突したとき、会社として何を優先するかを決める機能は、どの部署にも属さない。執行役員は単なる承認者ではなく、経営方針を実行可能な計画に変換し、部署横断で成果を生む責任者である。※三つの階層それぞれの役割と決裁は、後段「役割と権限の線引き」で一覧する

運用 / 方向性は、執行役員が提案する
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

方向性は、執行役員が提案する。合意した方針は、決めた場に戻してから変える

経営方針の決定手順

01

執行役員が、年間の方向性を提案する

数字と現場の実感から、執行役員が原案をつくる。

02

オーナーと議論し、経営レイヤーで合意する

十分に検討してから決める。検討が不十分な決定は、記録しても後から覆りやすい。

03

各部署に、取り組みテーマとして下ろす

テーマ=年間1〜2個の重要改善指標に絞る。これが執行レイヤーの出発点になる。

04

変更は、決めた場に戻して理由とともに

変更の経路を一本にする。必要な方針変更は認めつつ、変更手続きを明確にする。

なぜ「1〜2個」に絞るか

  • 重点を絞らなければ、どの施策も十分に進まない。現場の可処分時間は有限である
  • 絞れば、方針変更による手戻りを減らせる。徒労感の発生源を断つ
  • 指標が絞られて初めて、達成度を評価と紐づけられる
  • 方向性が揺れないことが、悪循環を断つ最初の条件である

経営方針の決定は、経営レイヤーの責任である。方針が定まらなければ、各部署の計画も定まらない。

運用 / 合意した方針を、個人レベルまで落とす
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

合意した方針を、個人レベルまで落とす

実行計画の運用

01

取り組みテーマをもとに、行動計画を策定する

経営レイヤーで合意したテーマを、執行レイヤーが実行可能な計画に具体化する。

02

行動計画は、執行レイヤーで確定する

計画の決定権は執行レイヤーにある。経営会議へは共有のみ。ただし予算超過・テーマの変更・重要な経営リスクを伴う場合のみ、経営会議で再審議する。

03

行動目標を、個人目標まで具体化する

テーマに基づく目標を各担当者の目標に具体化し、本人と合意する。

04

評価に反映する

達成度と、どう達成したかを見る。テーマ偏重を避け、部署の基盤業務と併せて評価する。※評価への正式接続は制度設計後(人事コンサルと協業)。立ち上げ期間中は評価に直結させない

これで何が変わるか

  • 方針が示されれば、各部署が自ら計画し、実行できる。確認してから動く組織から、計画に沿って動く組織へ
  • 担当者未定の案件が残らない。計画策定時に、担当者を決める
  • 評価がテーマへの貢献と結びつき、納得感が上がる
  • 詰まりは執行会議で解消する。計画が止まったまま放置されない
  • オーナーへの説明責任は執行役員が持つ。現場との対話はこれまで通りでよい。会議体に乗せるのは指示と決定だけ

決定の階層。経営レイヤー=年間テーマ・予算・重要改善指標/執行レイヤー=行動計画と部署横断の優先順位/マネージャー=自部署の日常業務。経営レイヤーは権限内の個別施策を都度承認しない。共有(報告)と、例外時の再審議だけを持つ。ただし計画内の個別の支出・契約の決裁は、権限表の区分に従う。

計画は、隣り合う二つの階層が組んで作る。執行役員とマネージャーが連結点になり、方針が個人の行動まで途切れずつながる

オーナー × 執行役員 経営方針の策定 会社が進む方向と、判断の基準を定める
執行役員 × マネージャー 部署単位の実行計画の策定と進捗の確認 方針を部署の計画に落とす
マネージャー × メンバー 個人の行動計画の策定と進捗の確認 計画を個人の行動に落とす
第3章
03

設定にあたって、決めること

権限の線、執行役員内の役割分担、日々の対話、委譲の守り方、会議と報告の経路。そのうえで、意思決定の速さと柔軟性がどう変わるのかを確かめ、導入の三段階を示す。
決めること / 役割と権限の線引き
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

役割と決裁を三階層で引く。「報告だけで進む」領域を広げることが、委譲の実体である

事項ごとに、関与の深さ(報告を受ける◎・承認◯・協議△・★経営会議の事前審議)を定める。日常の判断は各階層に委ね、オーナーは重要な経営判断に専念する。

階層担う役割決めてよい範囲と、オーナーの関与
オーナー
経営レイヤー
対外的な関係構築と投資判断。中長期的には、ブランド哲学の言語化を主導し、重要な取引関係を会社の関係として育てる 協議(△)・★事項を決める 経営計画、部門・役員・規程、懲戒、1,000万円超・予算外の支出。承認(◯)で関与するのは50万円超の商品発注・年間240万円超の契約・M2以上の人事など。それ以外は、報告(◎)で把握する
執行役員
二つの層に属す
経営方針の提案、実行計画の策定、部署間の調整、人材の配置・育成、進捗管理と課題解決 決めて、報告(◎)すれば進む 1件50万円以下の商品発注、予算内の備品・経費、M1以下の採用・考課・退職、チーム編成・部門内の配置
マネージャー
執行レイヤー
担当部署の運営と日常的な意思決定、個人目標の設定、メンバーの育成、現場課題の把握と対応 自部署の日常業務の運営。個別の線は権限表のマネージャー等級(M2/M1)の区分に従う。自分の線を越えるものは、執行役員へ上げる

「役割」は各階層が責任を持って担う仕事、「決裁」は最終的に決定できる範囲を示す。全文は別表「職務権限一覧表(PASAND版)」。代表・取締役・執行役員・マネージャー(M2/M1)・メンバー、企画はMD・ディレクター・デザイナーの系列まで、事項×職位で線を引いている。
※金額の線(商品発注50万円・契約240万円など)と区分はたたき台。この場で調整できる

決めること / 執行役員内の役割分担
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

部署名ではなく、機能で分ける。全部署に、管掌を一人置く

執行役員を置いても、分け方が決まらなければ「全員が見ている=誰も引き受けていない」状態になる。分け方の軸と、置き方の原則をたたき台として示す。

分け方の軸 | 機能で三つに切る

つくる 企画・生産管理
何をつくるかと、つくり切ることに責任を持つ
届ける 店舗・EC・営業
売り方と、売り切ることに責任を持つ
支える PR・バックオフィス
伝え方と、全体を回す基盤に責任を持つ

部署単位で割ると、部署をまたぐテーマが宙に浮く。店舗外販売のように、どこのKPIにも入らない領域が生まれるのはそのためである。

置き方の原則

  • 全部署に、管掌を一人置く。抜けをつくらない
  • 一つの部署に、管掌は一人まで。二重指示を防ぐ。一人が複数のブロックを持ってもよい
  • 課題のあるテーマには、管掌とは別に主担当を置ける。平時の管掌と、立て直しの推進役は分けてよい
  • 不在時の代行を、先に決めておく。議長と記録も同じ順で読み替える
  • 意見が割れたら、選択肢を整理して経営会議に付議する。個別にオーナーへ持ち込まない

役職を置くだけでは、機能しない。この設計が執行役員に求めるのは、経営方針を計画に落とす・部署横断で優先順位を調整する・数字で判断する・マネージャーを育てる・課題を構造化して解くこと。候補者の現状と、この役割との差をまず確かめたい。
だから、最初からすべてを渡さない。渡す範囲を限って始め、30日ごとに点検して、できた分だけ広げる。オーナーへの依存を、執行役員への依存に置き換えないためである。※範囲内の分担と業務配分は執行役員が自ら決める。経営レイヤーで合意するのは初期の線だけ。ブロックの切り方も部署の組み合わせもたたき台で、この場で調整できる

決めること / コミュニケーションの再設計
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

仕組みを活かすのは、日々のコミュニケーション。MVVを起点に再設計する

権限・会議体・計画は、構造である。構造の中を流れる日々の対話の質が変わらなければ、委譲は動かない。判断と対話の共通基準を MVV・Pasand Promise に置き、三つの場を設計し直す。

場何を変えるか具体的なアプローチの例
ミーティング
質の向上
報告の場から、決める場へ。結論だけでなく、MVV・方針にどうつながるかを添えて議論する 材料は前日までに共有し、会議の時間は議論と決定に使う。決定は理由とともに記録する。会議体の設計は後段・運用規格は別表で定める
1on1
質の向上
詰まりの解消と、成長支援の場。行動指針に基づいて「どう達成したか」を語り合う 執行役員×マネージャー、マネージャー×メンバーの計画を組むペアごとに定例化し、週報に乗らない詰まりと意欲を拾う
テキスト
指示・FBの書き方
指示・依頼・フィードバックに、背景と目的を足す。受け手がその一通で判断し、動ける情報量を基準にする 事実と期待を分けて書く。受け手の意欲を上げているか・情報を足せばもっとスムーズに進まないか。送る前にこの二つを問う

三つの場は、五つの状態を日々の運用に落とす手段である。判断材料が届き、詰まりに経路があり、目指す先が共有される。三つの場は、その実体である。

決めること / 委譲の守り方
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

任せるとは、判断する権限と、結果への責任を渡すことである

委譲を守る五つの運用

01

懸念があれば、責任者に確認する

指示ではなく質問の形で 質問であれば、判断は責任者に残る。

02

追加案件は、既存業務の優先順位と合わせて判断する

急な依頼があってよい。新しい業務を加える際は、既存業務の見直しも行う。

03

責任者を置けない企画は「今期はやらない」

無理に責任者を立てない。名目上の責任者を置いても、実行責任は明確にならない。

04

部門横断の取り組みは、経営方針として共有する

方針がないままだと、部門をまたぐ取り組みは負担の押し付けと受け取られる。

05

責任者が機能しない場合は、支援または交代を判断する

必要な支援を行い、改善が難しければ交代を検討する。対応を先送りしない。

委譲に不安はつきものだ。しかし、不安を理由に直接指示へ戻れば、委譲は成立しない。責任者を介さずに現場へ指示すれば、委譲した権限が形骸化し、現場は「結局は上が決める」と学習する。

残した領域では(三つ)

01

議論に加わる

相談が上がったテーマには、結論が出るまで関わる。途中で離れると、決まらないまま止まる。

02

経緯と結論を残す

記憶ではなく記録に。残っていれば、次に同じ議論をせずに済む。※責任追及のための記録ではない

03

決めた進め方を尊重する

工程や期限を動かす場合は、決めた場に戻して、理由とともに変える。

問題は、相談が来ることではない。来た後の扱われ方である。議論に加わりきらないまま進み、経緯が残らず、進め方が途中で変わる。結果、原因の所在が部署の側に見えてしまう。

オーナーは「任せる責任」を、執行側は「引き受ける責任」を持つ。どちらも「合意した意思決定の手順を守る」という一つのことである。現場との対話はこれまで通りでよい。会議体に乗せるのは指示と決定だけである。※「残した領域」は、固有の二領域と、★・△として経営会議に上がったテーマを指す。緊急時の例外は後述

決めること / 会議体とオペレーション
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

意思決定の場と頻度を定め、確認や手戻りを減らす

会議体頻度決めること出席受けるもの → 出すもの
経営会議 月次
重い審議
方向性(年間テーマ・予算・重要改善指標)と権限の線、★事項の事前審議、30日ごとの運用レビュー(権限の線・会議の規格・手順の遵守)。行動計画は共有を受けるのみ(例外時は再審議) オーナー・執行役員
議長=執行役員/最終判断=代表
In: 全社3点セット・決裁一覧・★起案
Out: 経営判断・確定テーマ・決定ログ
ヒアリング会 週次
立ち上げ期。以後も継続
決める場ではなく、聞く場。現場の状況・詰まり・気づきを、オーナーが直接聞く。決定が要る論点は、執行会議・経営会議へ回す オーナー・執行役員
進行=管掌執行役員/テーマにより担当者が同席
In: 現場の状況・気づき
Out: 論点の整理(決定は会議体へ)
執行会議 週次 行動計画の確定と進捗、詰まりの解消、部署横断の優先順位 執行役員・マネージャー
議長=執行役員/最終判断=管掌執行役員
In: 各部の週報・上位会議の決定
Out: 調整結果・更新した行動計画・上申(★起案)
部署会議 週次 自部署の取り組みテーマと行動目標の進捗 マネージャー・メンバー
議長・最終判断=マネージャー
In: 個人の進捗・現場の詰まり・決定共有
Out: 個人のアクション・週報(執行会議へ)

決める場所を固定して、場外の確認・差し戻し・「言った言わない」を減らす。階層を跨ぐ相談は会議体に乗せ、すべての会議に議長と最終判断者を置く。提案は結論から述べ、判断材料と理由をセットで出す。
下の会議が出したものが上の会議の材料になり、上の決定が翌週の伝達で下へ戻る。様式は「3点セット(週報)」と「決定ログ」の二つだけで、新しい管理資料は作らない。※記録・固定アジェンダ・欠席時の扱い・起案様式・決定ログの項目は、運用規格として別表で定める。構成・頻度はたたき台。この場で増減を調整できる

導入にあたって / 意思決定の速さと柔軟性

権限委譲によって、意思決定の速さと柔軟性はどう変わるのか

これまでは、オーナーがその場で判断することで、物事を素早く進められていた。一方で、判断が集中することによる確認待ちや、方針変更に伴う手戻りも生じている。
執行役員レイヤーの設置は、こうした問題を解消するためのものだが、新しい意思決定の仕組みが定着するまでには、一時的にスピードや柔軟性が失われたように感じられる可能性がある。
重要なのは、個々の判断の速さだけでなく、組織全体として、どれだけ速く、継続的に成果を生み出せるかという視点である。

移行期に想定される変化思いついたその場では、決まりにくくなる「スピード感がない」と感じられやすい一度決めた方針は、その場では変えにくい「融通が効かない」と感じられやすい現場の話が、執行役員を経由して届く「距離ができた」と感じられやすい仕組みが定着すると、何が変わるのか確認そのものが、減っていく範囲が決まれば、聞かずに進む仕事が増えるやり直しが、減っていく決定が記録され、理由なく覆らなくなる手続きに、慣れていく誰に・どの場で決めるかが身につくまで移行期の負荷を最小限に抑えながら、確認待ちと手戻りを減らし、組織全体の実行速度を高めることを目指す。権限の線引きと運用が機能していることが、その前提になる

急ぎの案件は、会議を待たずに判断できるようにする。臨時の招集と持ち回り決裁を先に決め、意思決定にかかる時間を測って、改善しなければ運用を見直す。権限委譲は、渡す範囲を限って段階的に進める。
成立の前提は一つ。合意した決め方を、オーナーを含む全員が守り続けることである。

導入にあたって / 導入の三段階
五つの状態① 方向性② 手順③ 判断材料④ 対応範囲⑤ 相談相手

導入は三段階。年内に設計し、年始から立ち上げ、まずは1シーズンやり切る

段階期間の目安主にやること完了条件(成果物)
1 設計・合意 年内
着手決定〜12月
固有領域と留保決裁の確定/執行役員の分担と、不在時の代行の文書化/権限表(現時点版)・会議体の確定/各部のテーマと日常判断の仮置き/AI・データ基盤の適用範囲の確定/五つの状態のアンケート設計/開始時点の測定(設計用の臨時経営会議を2回置く) 役割分担書・権限表(現時点版)・会議体規格・テーマ一覧・開始時点の記録1枚
2 立ち上げ 年始から90日
1月〜3月
マネージャー説明会/会議体と決定ログの運用開始/権限委譲と行動計画の運用/現場ヒアリング会議(週次)/30日ごとのレビュー(テーマは初回仮置き・30日で確定) 決定ログの稼働と手順の遵守状況・アンケート結果(開始時点比)・運用課題リスト
3 定着・改善 4月〜 ルールの修正/評価制度との接続/管理職の育成/四半期の定期診断 改訂権限表・評価への接続・診断レポート

立ち上げ期の点検は、件数ではなく評価で行う。五つの状態をそのまま評価項目にしたアンケート(+自由記述)と、週次のヒアリング、30日ごとの運用レビューで測る。何をもって成功とするかは、着手前に合意しておく。12ヶ月の結果指標(離職率など)は中長期で検証する。
90日レビューは続け方を直す点検で、やめるかどうかを決める場ではない。再判断は1シーズンを終えた時点で行う。中核人材の離職や業績の大幅な悪化が起きた場合は、90日を待たず臨時レビューで切り分ける。※実行責任は第1段階が執行役員の起案とオーナーの決裁、第2段階以降は執行役員。各段階の完了判定は経営会議が行う。日程はたたき台で、この場で調整できる

ディスカッション① / これからの経営のあり方

経営基盤と、事業の競争力。二つを並べて議論したい

この提案が扱うのは、継続的に成果を出すための経営基盤である。もう一つ、商品企画の立て直しという経営課題がある。事業の競争力を高め、売上と利益につなげる話で、こちらは本資料の主題ではない。どちらも重要なので、順番と進め方をこの場で揃えたい。

論点確かめたいこと
01 商品企画を
どう立て直すか
本質的な課題はどこにあるか。商品そのものの競争力、商品構成とMD、販売実績や顧客理解の反映、企画から生産・販売までのプロセス、企画部門の組織体制、クリエイティブへの関与の仕方。商品・組織・プロセスの、どこを変える必要があるか。※原因を一つに決めつけずに議論したい
02 オーナーは
何に集中すべきか
委譲で空くのは、オーナーの時間である。今後、最も価値を生み出せる領域はどこか。何を自ら担い、何を組織に委ねるか。候補=ブランドの方向性/商品企画とクリエイティブ/重要な対外関係/投資と中長期の経営判断
03 執行役員に
何を期待するか
どのような役割と責任を担ってほしいか。どこまで経営判断を委ねられるか。部署横断で優先順位を決める機能を、どこまで任せるか。

これまでの経営手法が、会社をここまで成長させてきた。組織が大きくなったいま、同じやり方が制約にもなり始めている。次の成長には、オーナー自身の役割と意思決定の仕方を進化させる必要がある。

ディスカッション② / 実行に向けた論点

この場ですべてを決める必要はない。方向性を揃えたい

合意できることと、追加で検討が必要なことを分けて整理したい。どれもたたき台である。実態に合わないところは、この場で動かしたい。

論点いまの案と、確かめたいこと
01 権限の線引き オーナーに残すのは、対外の関係づくりと投資判断、意匠・クリエイティブの判断(線引きごと)、重い決裁。委譲するのは、それ以外の日常の執行判断。足すもの・減らすものはあるか。金額の線=商品発注1件50万円/取引契約 年間240万円/協議 1件1,000万円超
02 執行役員の
適性と育成
求める能力に対して、いまどこに差があるか。何を支援すれば埋まるか。渡す範囲を限って始め、できた分だけ広げる前提で、最初に渡す範囲をどこに置くか。
03 意思決定のルール 合意した方針を守るための仕組みと、変えるときの手続き。決定を記録し、変更は決めた場に戻す。この形で運用できるか。
04 実行の優先順位 組織改革と商品企画の立て直しを、どの順番・どの体制・どのスケジュールで進めるか。並行して進めるのか、どちらかを先に置くのか。

執行役員内の役割分担だけは、運用を始める前に確定しておきたい。分担が決まらないまま権限だけ移すと、誰に聞けばよいかが現場で分からなくなる。
※設計の範囲・体制・費用は別途ご提示する。評価のものさしは、着手が決まった後に合意する